お寺の過去帳は見せてもらえる?
お寺の過去帳は、戸籍より前の先祖の名前や亡くなった日が分かることのある記録です。ただし、家系図作りや先祖探しのために見せてもらうことは、原則としてできないと考えてください。曹洞宗・浄土宗・真宗大谷派などは、過去帳が身元調査に使われた過去の問題を受けて、閲覧や開示を断るよう寺院に求めています。
過去帳とは
過去帳は、お寺が檀家・信徒の亡くなった人について、俗名・法名(戒名)・亡くなった年月日・年齢などを書き留めておく帳簿です(コトバンク「過去帳」、デジタル大辞泉)。
世界大百科事典によると、お寺は毎月の命日の供養のために、命日ごとにまとめた過去帳を備えています。一方、家の仏壇に小さな過去帳を置く家もあります。古い過去帳は、当時のようすや人口の動きを知る史料にもなるとされています(同)。
| お寺の過去帳 | 家の過去帳 | |
|---|---|---|
| 置き場所 | お寺 | 自宅の仏壇 |
| 書かれていること | 檀家・信徒の亡くなった人の俗名・法名・亡くなった日・年齢など | その家の亡くなった人の戒名・亡くなった日など |
| 見られるか | 原則として見せてもらえない | 自分の家のものは見られる |
家系図づくりでまず見るべきなのは、自分の家の仏壇にある過去帳と位牌、お墓の墓誌です。これは家族が自由に見られます。
なぜお寺の過去帳は見せてもらえないのか
過去帳には、亡くなった人の名前のほか、出自や続柄が書かれていることもあります(世界大百科事典)。そのため、部落差別などにつながる身元調査に悪用されてきた歴史があります。
真宗大谷派(東本願寺)の解放運動推進本部は、経緯を次のように説明しています(しんらん交流館「身元調査お断り・過去帳閲覧禁止運動」の再確認を)。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1968年 | 戸籍が全面的に閲覧禁止になり、代わりに過去帳が身元調査に使われるようになった |
| 1971年 | 宗派内の寺院が興信所に過去帳を閲覧させていたことが指摘され、取り組みのきっかけになった |
| 1984年 | 「身元調査お断り」のプレートを寺院・教会に届け、掲示を依頼 |
| 1988年 | 過去帳に貼る閲覧禁止のステッカーを導入 |
| 2013年 | 新しいプレートを作り、全寺院・教会に配布 |
曹洞宗も、部落差別などにかかわる身元調査の問題を背景に、1981年に過去帳の閲覧・開示禁止を寺院に求めたと説明しています(下の表)。
宗派ごとの方針
宗派の公式サイトで公表されている方針には、次のようなものがあります。
| 宗派 | 方針 | 出典 |
|---|---|---|
| 曹洞宗 | 1981年12月、全国の寺院住職に過去帳の閲覧・開示禁止を求める指示要望を出した。檀信徒からの依頼でも、宗教目的以外の、たとえば単なる先祖探しや家系図作成の求めは断るよう求めている | 曹洞宗 SOTOZEN-NET 人権フォーラム(2017年6月) |
| 浄土宗 | 過去帳は住職以外の閲覧を禁止。家系図の作成や個人の先祖探しなど私的な目的での情報提供は、身元調査を助長するおそれがあるとして禁止。檀信徒や行政書士から協力の依頼があっても断るよう求めている | 浄土宗ネットワーク 人権センター(2018年12月) |
| 真宗大谷派 | 「身元調査お断り」のプレート掲示と、過去帳への閲覧禁止ステッカーの貼付を寺院に依頼している | しんらん交流館(2020年10月) |
どの宗派でも、最終的にどう対応するかは、それぞれのお寺が判断します。
お寺に相談するときの心得
それでもお寺に話を聞きたい場合は、次の点を心がけてください。
- **相談先は菩提寺(自分の家のお墓があるお寺)**です。縁のないお寺に過去帳を見せてほしいと頼むのは避けましょう
- 目的を正直に伝える。曹洞宗の方針は「宗教目的以外」の求めを断るよう求めています。供養や法要についての相談なのか、家系図づくりなのかで、お寺の受け止め方は変わります
- 断られたら、それ以上は求めない。上の表のように、宗派として断ることを求めている場合があります
- 過去帳以外の手がかりを尋ねる。先祖のお墓の場所や、古いお墓が残っているかなど、過去帳を見なくても分かることを聞いてみてください。どこまで答えるかはお寺が判断します
戸籍より前を調べるほかの方法
過去帳に頼らずに、戸籍より前をたどる方法もあります。
- お墓を見る
先祖の土地に残る古いお墓には、江戸時代の年号や戒名が刻まれていることがあります。本家や同じ名字の家のお墓も手がかりです。 - 郷土資料・古文書を探す
県史・市町村史に収められた宗門帳・分限帳や、国立公文書館デジタルアーカイブで探せる記録があります(先祖の調べ方)。 - 武士の家なら系譜集を見る
国立国会図書館のリサーチ・ナビ「系図を調べる」に、大名・旗本などの系譜集がまとまっています。 - 家紋・名字から考える
家紋の調べ方・名字のルーツの調べ方にまとめました。
自分で調べるには、古い文字を読む力と手間がかかります。戸籍より前の調査まで受け付けている代行会社もあり、家樹は文献・聞き取り・現地調査のプラン(家樹)、大野屋は本家・菩提寺・墓地・位牌などの現地調査を含む本格家系図(大野屋)、家系図作成代行センターは古文書・郷土資料・寺院過去帳を使った調査や菩提寺へのコンタクト(家系図作成代行センター)を案内しています。代行会社に頼んだ場合でも、お寺が過去帳を見せるかどうかはお寺の判断です。各社の料金や内容は代行会社の比較をご覧ください。
本
「家系図」を作って先祖を1000年たどる技術
丸山学/同文舘出版(2009年)
戸籍でたどれる先、文献や寺の記録を使ってさらに古い時代を調べる方法まで扱っています。
まず戸籍でどこまで分かるかを確かめる
過去帳を探す前に、戸籍でたどれるところまでたどっておくと、どの時代のどの人を探せばよいかがはっきりします。戸籍でさかのぼれるのは、一般に4〜7代前、150年ほどです(戸籍で家系図はどこまでさかのぼれる?)。戸籍の集め方は自分で家系図を作る方法にまとめています。
最終更新:2026-10-27